コラム

戦略的な課題解決

 会社において日常業務でも経営でも、仕事とは日々の課題解決の積み重ねです。課題解決こそが仕事だと言えます。では、その課題とはどんなものなのでしょうか。大きく捉えてみると次のようになります。

 ・顧客との実際の接点に関するもの。
 ・顧客や市場における価値に関するもの。
 ・組織の体質や風土や文化に関するもの。
 ・事業の運営に関するもの。

こうした中で見出された課題を次々と解決していくのが業務であり、経営なのです。これまでこれらの課題をそれぞれ具体的に捉え、解決を図れば良かったと言えます。

 この様な課題解決に有効な考え方の一つが、マイケル・ポーター教授が『競争の戦略』で示している次の3つの基本戦略です。

 1)コストリーダーシップ戦略、2)差別化戦略、3)市場集中戦略

コストリーダーシップ戦略とは、低コスト化を実現することによって競争に勝つことを目指すものです。
差別化戦略とは、他社にない特徴のある価値を提供する事によって競争に勝つことを目指すものです。
市場集中戦略とは、特定の分野に経営資源を集中する事によって競争を制することを狙うものです。
しかし、こうした特定の分野に集中する場合にでも、コストか差別化のどちらかに軸足を置くべきだとしています。
という事は、全てのケースにおいて、コストリーダーシップ戦略か差別化戦略のどちらかを選択する事が求められている訳です。

 こうした戦略が今も有効であることは間違いないでしょう。しかしグローバル化した市場の現実は、その有効性が以前より低下していることを示唆しています。
コストで勝つ戦略を強化しても、新興国の労働市場から生まれる製品群の中でコストリーダーになることは極めて困難な状況です。進んだ技術による差別化戦略で自社製品を際立たせようとしても、新興国市場では通用しないケースも多々発生しています。
このような状況にあるグローバル市場で競争を制するためには、単純に的をしぼるこれまでの課題解決を超えるような、課題解決のスタンスが必要になってきているようです。そのようなスタンスから浮かび上がるのが戦略的な課題解決と呼ばれるものです。

 その一つがコストと差別化を同時に追求するという課題解決法です。その重要ポイントは差別化追求の領域にあります。即ち、純粋に品質や高機能を追求するのではなく、顧客が感じる価値を追求するのです。
低下価格を実現しつつも、顧客に価値を感じてもらう為の手を打つのです。それほど高度でなくても顧客に「これは良い」と感じて貰う機能とデザインの開発、そして心地よいブランドの展開、といったことがそれに当たります。

こうしたやり方での典型的な成功例はユニクロでしょう。生産体制を低価格に対応できるようにし、「ヒートテック」のような魅力ある機能を開発するだけではなく、
海外の有名デザイナーを招聘したり、ニューヨークやパリのスマートなブランドを展開する企業を買収するなど、精力的に取り組んでいます。
こうしたことはユニクロを展開するファーストリテイリングのような大手だけに可能だと受け止められがちですが、小さな企業でも同様の考え方は可能です。

冒頭に上げました4つの課題を関連付けて解決に取り組むことは小さな企業でも可能です。例えば、低価格を追求する場合を考えてみますと、次のような進め方は可能なはずですし、既に実際に行われているケースもあるはずです。

 ・自社の顧客接点の状況を適切に受け止め
 ・自社の顧客の価値認識を適切に把握し
 ・自社の体質や風土や文化を通して解決する好ましい方法を考え
 ・自社の業務運営プロセスの中に組み込む形を見出して、実行に移す。
といった進め方です。

差別化を追求する場合にも同じことが言えます。こうした取り組みから生まれるものは、自社のDNAを色濃く映し出しており、自社独特のものになる可能性を秘めています。
こうした戦略的な課題解決が組織にもたらすものは、「自社のDNAを基盤とした環境適応力」だと言えるでしょう。アップルのiPodの誕生はこうした流れから生まれたと言われています。
アップルが意識した自社の体質や風土や文化、即ちDNAは、「我々はユーザーインターフェースの会社だ」ということだといわれています。


hattori ■ 服部 雅典
(元) 外資系IT企業 にて技術サービス部門・開発部門
    ・営業部門・管理部門の役員を歴任
(現) 民間企業コンサルタント
    ・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 CD
    ・兵庫県農政環境部 6次産業化プランナー
    ・認定NPO法人 産業人OBネット 理事

ページの先頭へ戻る
有料職業紹介事業 【厚生労働大臣許可 28-ユ-010036】 プライバシーマーク