コラム

今、若手社員を育てるには

 今、日本の企業組織では人が育ちにくくなっていると言われています。かつての日本の企業組織には、人を育てる仕組みが埋め込まれていました。ところがこの仕組みが機能しなくなっているようです。

日本の企業組織が得意とした、先輩や上司が後輩を職場の中で育てる、組織内指導と伝承を軸にしたOJTは、終身雇用と年功序列が制度の基本にあった時代には、若手の育成に大きな力を発揮しました。

ところが今は、その基本が崩壊しています。さらに、組織の存立の軸となっていたピラミッド型の構造も崩れてきており、組織内の上下関係も流動化しています。
その理由の一つに、最近増加しているプロジェクト型組織が有ります。このような組織形態では、上司と部下の関係は一時的な位置づけとなり、上司の部下を育てるモチベーションが失われがちになります。

 IT化が進み、個人の仕事がブラックボックス化したことも、組織内で人が育つことの阻害要因となっています。従来ですと、先輩社員の仕事ぶりを肌で感じて、直接教えられなくても自然に学び取る事が出来ました。
ところが今は、仕事のツールの殆どがIT化された為、隣の席の先輩が何をやっているのかわからなくなってしまいました。同じ部屋にいるだけでいつの間にか仕事を覚え、成長しているという環境が無くなってしまったのです。

 若手が育つ過程で身に付けるよう求められる能力も変わってきました。今の時代には、必要とされるスキルがどんどん変化し、新しくなっていきます。そのため、これまでの経験が豊富な上司が部下に教えることが困難になっているのです。
こうした状況の下では、スキルよりもどんな思考・行動特性をもつかが重要になっています。しかし、こうした思考・行動特性は上が下を指導して伝える事が極めて困難なのです。

若手を育てる為に、今求められていることは、上が下を指導するのではなく、組織全体で学習に取り組み、その中で自立的に育っていくという育成方法です。そこに必要なことは、一人一人が自分自身で考え抜く事と、自分自身に気付かせるためのコーチング的マネージメントスタイルです。

大手企業の20代の若手社員を対象とした調査によりますと、彼らは次のようなことによって成長を実感するようです。

 ・いかに自分が日々の仕事に主体的に取り組めているか、ということ。
 ・挑戦的な仕事が与えられ、コーチング的マネジメントがなされ、成果に対する健全なプレッシャーが
  あること。
 ・お互いに教え合い、高い成果を得るために協力し合う、チームワークが取れていること。

これから見えてくることは、「やりたい仕事に就けた」とか「長期的なキャリアの計画が明らかになっている」といった、一般に言われることとは違っている事です。

 こうしたことから浮かび上がってくる、若手が育つための施策とは、次のようなものになるでしょう。

 ・上下関係にこだわらず、お互いの間で学習し合い、仮説を作って検証しながら適切な理解をもとめよう
  と行動する組織をつくること。
 ・戦略の実行を担うのは一部の社員だけにせず、それらに必要なスキルを多くの社員が修得できる
  仕組みをつくること。
 ・幹部候補生だけではなくて、多くの社員が試練の場に立つという機会を持てるような業務運営を工夫
  すること。

 このような事を取り入れて、社員教育制度、業務運営の仕組み、組織運営の制度などを整備することが、若手を育てる上で大きな力になるだろうと思います。
敢えてもう一つ付け加えておきますと、組織にチャレンジして失敗することは若手の組織貢献なのだ、ということも頭の片隅に置いておくとよいでしょう。


hattori ■ 服部 雅典
(元) 外資系IT企業 にて技術サービス部門・開発部門
    ・営業部門・管理部門の役員を歴任
(現) 民間企業コンサルタント
    ・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 CD
    ・兵庫県農政環境部 6次産業化プランナー
    ・認定NPO法人 産業人OBネット 理事

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